アピール
わたしは言いたい
ここに美しい物語がある
千度読み返しても
また千一度指を染めたくなる
波のしぶき色した美しい言葉がある
それに埋もれてわたしもまた
海になるのだと
わたしは言いたい
ここに美しい音楽がある
いつかどこかで確かに聴いた
だから胸が締め付けられる美しい共振
解きほぐされた魂の記憶がある
それに撫ぜられてわたしもまた
旋律になるのだと
わたしは言いたい
ここに美しい人がいる
むしろこれしか言いたくない
ここに美しい人がいるのだ
わたしの瞳の中に息づく彼の
眼差しの中に棲むことによってわたしもまた
愛になるのだと
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