タバコを飲むときのまなざしや指や
読んでる雑誌やその皺や
見覚えのある何気なさに目がとまるとき
あたしは呆然となるのです



人生に出会う恋の数だけ
あなたは形を変えて待ち伏せている
仕舞い込まれた夏休みのように
なくなったと思っていた記憶
置いてけぼりのかくれんぼなのです




友達が何気なく言う感想や文句や
自分が耽る感慨や切なさにさえ
粟の立つ肌への風に懐かしさを感じるとき
あたしは呆然となるのです



人生に出逢う恋の数だけ
あなたは形を変えて待ち伏せている
その響きに影に気がついても でも
追いつくことはない
蜃気楼の遠い背中なのです




夢の中で握っている手が
ふと気が付いたらあなたの手に
音もなくすりかわって 飛び起きました
人生に出逢う恋の数だけあなたが
あなたが




あたしは
あたしはまた
呆然となるのです





>> モドル>