緊急事態(スクランブル)

 




ひ弱な手首に赤い線を引いて
あなたは生存を試そうというのか
脈動の暖かい線と君の決意は十字に交わり
そのスクランブルに事はこんがらがるばかり



電話はいつも鳴りっぱなしに鳴る
あたし死ねないのと苦情を言う
死の権力は絶大で
私の昼は吸い込まれる



両世を股にかけて帝王のように
是見よと手首を切るあなた
まるで核兵器のボタンのように
一つ間違えれば世界が滅ぶという中で
電話網を駆使しあなたは世界に不安を運ぶ
あたし押しちゃう
あたし死んじゃうと
脅しをかける



ひ弱な手首で足りなくなる前に
聞いてくれ 狼少年
試されている生存の側に悲鳴があることを
あなたは忘れていやしないか



聞け この夥しい数の唸り声を
世界は叫びを押し殺す苦悶で一杯だ
赤い血も流さず 涙も見せず
死んでいく声が聞こえないのか
その上あなたはこんな虚弱な世界に
あなたの体重まで乗せようと言うのか



え? なに?
操作室は完全防音?

それはそれは
・・・道理で聞こえないわけだ








 

 

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