コチコチ刻む




 消える どこへ
お手頃な死ならば
線路に転がっている
けれどあそこは「場所」ではない
ただの砂利道 逃避行だ


 飛ぶ どうやって
翼のないのは知っている
せめて画面で fly me to the heaven
どこまで逃げてもロゴスの檻
飛んで飛んでも月には届かぬ
多分これも「道」じゃないのだ


 謳う 何を
第九なんぞ うんざりだが
悲しみばかりに上手になって
楽しみ方が分からないので
 けれどもこの音は違う
兄弟達よ 分かってるだろ
この響きじゃないだろう


 目指す だいたいどこを
上はないとレノンは言った
あそこには空しかないのだと
下もないと彼は笑った
そこに地獄もないのだと


 無慈悲な天地に挟まれて
感傷もなく涙も出ない
ただっぴろいこの単調
ぼんやりとどこまでも続いていくんだろう
 みはるかす草原に時計が千個
コチコチ刻む微妙な秒針
 いつだってこうだったはずだ けど
見ている額がやっぱり物憂い







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