メルヒェン
    体に埋め込まれた童話





三人もの友達に電話を掛けてもなお
孤独でたまらない夜は
楽しいことばかりの思い出がつまった
十七が終わる頃に訪れます
まずお風呂に入りましょう
出てきたら鏡の前に立ち
あなたの大嫌いなお腹のあたりを
そっと湯気立つ鏡に映してご覧なさい


まるで狙いすましたように中心に
丸い傷跡があるでしょう
ブラックホールのように渦巻いて
あなたの身体に吸い込まれているその傷は
遠い昔
確かに誰かと繋がっていた沈黙の証拠
確かに誰かと同一であったエデンの記憶
ああ あの頃には
間違いなく自分は独りではなかった
いつの間にあの幸せは失われてしまったのかしら?


大きな喪失に気が付いて
あなたは悲しくなるかもしれない
涙が出たら拭きましょう
それから髪を乾かしまして
ゆっくり傷を癒す方法を考えましょう
森へ尋ねれば
老獪な魔法使いの婆様が教えてくれます
「口づけすれば痛みは直るよ。
お前のかわいい唇じゃそこには、
とても届きそうにないがね」
憎らしい老人にはこう言ってやりましょう
「おあいにく様。自分で届かないのなら、
私は他の誰かに口づけてもらうわ」


それから窓を開け放って
その誰かとは誰かしらと悩みながら
星を数えて眠りましょう
目覚めたときから解答は
いつもあなたの側にいます








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