26.雨の音






 これ…、どういうことですか。


…書いてあるだろう。最後に。


…本当なんですか。


厚生局の出したレポートに、嘘があるわけないだろう。


………。


つまりトードー・カナンの心肺機能と免疫機能じゃ、
五〇の大台は超えられないってわけだな。


 …人工子宮…人工産道……出産時の圧迫不足…。
でも何故です? こっちと同じやり方をしているんでしょう?


ニンブスは限界円周上のシティだ。
母星とは重力も陽光の照射量も酸素濃度も違う。
人工調節で数値的には問題のないレベルまで
持っていってはいるが、母星と同じ結果を
出す事は簡単に言うと、無理なんだ。


 ………。


それでも自然出産をするよりはマシだ。
そもそもの生殖能力が低い上、エア・シティにおける
異常出産率は母星の約十倍だそうだ。
こんな数値で社会維持は出来ない。
だからこそ厚生局は遺伝子提出義務を課し、
人工出産でその帳尻を合わせる。


 ……四〇台でころころ死ぬ人間を量産してですか?
 エア・シティの環境以外では生きられないような
人間を量産してですか?


エア・シティが何の為に建造されているか考えろ。
移民などと言っているが、実情は膨れ上がった老年人口の
受け入れ口だ。そんな場所に社会の変革を望み、
長生きして尚権利を主張するような正真の人間が必要か?


 …………。


政府代表が再三言ってるだろ。
エア・シティ建造事業は母星にとって必要不可欠な、
福祉事業だと。









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