「………」




(返事のないまま、シーツの上で寝返りを打つ音がする。
集中を邪魔されたことによる億劫なため息。
女の子はイヤホンを当てて、ベッドに寝転がっているのである。友達は彼女の、足の方へ腰掛けたらしい。)





「…邪魔しないでよ…」
「そんな何十年も昔の、誰とも分かんない人間の音声繰り返し聴いて何が楽しいかなー」
「……ぞくぞくするんだもん…」
「そういやスタンツェが話がしたいって言ってたよ、ソラと。提出義務サボってるんだって?」
「………」
「もうお互い遺伝子提出して済ますってことで話はついてるんでしょ? あたしなんか18歳になった時出ししちゃったよ。楽だった」
「…あのね……」
「うん」
「スタンツェもシェファーも、マシンでしょ」
「ああそうね。全然そういう感じしないけど」
「…だったら、誰かの入力を受けて行動を起してるんだよね」
「まあそういうことよね」
「誰の?」
「えー?」




(衣擦れの音。少女が体を丸めたらしい。)





「私聞いてみたの、スタンツェに。それはもしかして、神様ですかって」
「………」
「そしたら神様は現実には存在しませんって。
 …じゃあ、誰なのかなあ? 私たちの子供を欲しがってるのって…」