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天使を逃走
-Epilogue-






(97年6月21日 全国紙R紙)



 北部のS村で十三日に起こったG・スカファルリ殺人事件は、保守的な村の事情と教会とが絡み合い複雑な展開を見せてきた。
 事の発端は十三日、約束があると言い残し、昼過ぎに氏が出かけたまま帰ってこないことを心配した家族によって捜索願が出されたことに始まる。 村から出ていく唯一の手段である鉄道駅で目撃された情報がなかったため、付近の沼を警察が捜索。十四日早朝、銃弾六発が打ち込まれた同氏の死体が発見された。
 当局は既に、今回の事件の背景に九年前起こった精神障害の少女の死亡事故があることを掴んでおり、その際村の住民達が結託して殺人であることを覆い隠そうとした痕跡があることなどが確認されている。
 十五日、現在村を担当している神父が、当時の神父がその件に関わっていた可能性を示唆した影響で、教会サイドもこの事件に重大な関心を払い始めており、現在、現場では警察、住民、教会が互いをにらみ合う三つ巴の状態である。
 今後真偽の程は法廷で明らかになるであろうが、スキャンダラスな事件なだけに教会側がどれだけ協力を示すかがその鍵となると見られている。


 一方、当局が必死になってその行方を追っている被疑者グロリア・モンタネッリの居場所は未だにつかめないままである。
 偶然にも逃亡直前、ヴェネツィアの仮面工房に置いてモンタネッリが顔型を取ったとの事実が当局を色めき立たせたが、既に職人がその石膏型を誤って廃棄してしまった後であった。
 もっとも、最後に彼女を見た駅員の話では、今までとはかなり印象が違って見えたとのことであるので、顔型が存在していたとしてもその効果はいかほどであったであろうか。
 モンタネッリは今も、イタリアのどこかの街角でひっそりと身をひそめているのだろうか。

 現在までのところ、身元不明の死体の中に、モンタネッリの特徴を備えているものは見つかっていない。





「天使を逃走」
Fine.






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