下手
道を歩いていて、小鳥が飛びのくのに傷つく人間がどれくらいいるものかしら。見ている限り、そうは多くない様子だ。僕はその少数民族のいち人である。 僕は不器用なたちで、自分の善意を表出するのが下手なのだ。その上ご面相も体つきも、その下手さを補ってくれるほどの傑作ではない。 いや、もちろん向こうから来たカップルがそそくさと取って返したり、タクシーの運転手が目的地を聞いた後、降車まで黙り込むほどの悪相ではないけれど、見たとたんに女性が、「ああこの人は、優しい人に違いない」と、不気味なほど好意的に解釈してくれるといった顔でもない。 ぱっとしない普通の顔――。そういうふうに自覚している。 それでも、小鳥は逃げるのだ。 悪いことなど、何もしないのに。 悲しいことに、僕のほうは小鳥達が大好きである。あの折れそうに小さな足や、可憐な目元を見ていると、心が癒されるような気がする。 彼らを脅かさずにいたいのだ。 仲良く、和解してともに暮らしたいのだ。 しかしその気持ちが小鳥達に伝わることはない。僕がいかに小市民的生活を送っているか知っているはずの、近所のスズメ達にしても、僕が一歩でも近寄ろうものなら互いに声を掛け合って、即座に安全な場所へと逃げ去ってしまう。 なので僕は、小鳥達に遭遇した時は、彼女らがびっくりしないで済むよう、極力道のはじっこへ寄って歩くようにしている。 そうまですれば、小鳥達は一応逃げないでいてくれる。とはいえ警戒心は丸出しで、いつまでたってもその先へは進めそうにないが――。 ああ、誰か小鳥達に教えてくれないものかしら。僕の胸にはこれっぽっちの悪意もないんだということを。 いやむしろ、彼女らに対する好意と親切に、満ち溢れているんだということを。 (EOF) |