報告




 数週間後。はなえから写真入りの結婚報告ハガキが届いた。

「わたしたち結婚しました!」


 知ってます。
「地獄の一日」とでもタイトルをつけたいような結婚式の写真の下に、直筆でメッセージ。

「次はあーくんだね! 心からあーくんのしあわせを祈ってます!」




 知らん間に、ハガキを破っていた。
横に一回、縦に一回。
 いやいや冷静ですよ、俺は…住所の部分だけありゃいいだろ?


 ――ほうら。こういう女だよ。
全体こういう女なんだ。
腹立つ。
 恥知らず。厚顔無恥め。
安積のとこにもこう書いたか? 死んじまうぞ、あいつ…。



 恐ろしく天気のいい日曜の朝から、俺は胃にあの日の肉料理の脂を抱いてベランダに出ることになった。
 灰皿を手に、ひたすらニコチンを吸う。向かいのマンションには早くも洗濯物がひらめいてる。
 じき、あの不穏な生き物が、どこかの一室に閉じこもって、「天使」を産んだりするんだろうか。
 そしてそれが、恥知らずな幸福の下で、同じように独善的な人間に育てられたりするんだろうか。



 あいつらの家の中で、修正しようのない欺瞞が刻々と積み重なっていって、俺との過去さえ勝手に利用されている。

 たまらんですな。
あーもう。

 一刻も早く忘れたいのに、普段ないような音量で聞かされた曲が今頃頭の中に蘇ってきて、



あーもう。
たまらんですな。



(EOF)




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