深夜






 人気のない道を一時間も歩き回って、ようやく、両足がアパルトメントに向かう気になってくれた。
 階段を昇って、部屋に戻ると、思いがけず灯りがついていた。




同居人がビール片手に立っていた。
「おかえり」




「…なんで?」
「予定が変わってな。随分遅い帰宅だな?」
「道に迷った」
「…どんだけここに住んでんだ」
「一週間も留守にするのがいけないんだ…」
「ああ?」







「あんたがいないと、道に迷う」






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