・・LastNight I Cried・・










あなたのなかから音がしていた
きーきーと硝子の音がしていた
僕を見る目に赤みは無かったけれど
僕には聞こえた
あなたはいつもわーわーと泣いていた
抑えつけられた隙間から細い音が漏れていた
それは硝子が割れる寸前のような音だ



僕は胸がたまらなくなった
だけど君を両腕で締めたあの時
硝子窓を守ろうとしたのか潰そうとしたのか
僕は自分でも分からないのだ








あなたはきれいだ
あなたはきれいだ
あなたはきれいだ
ことばがむなしゅうなる







君の背中に羽根が見えたよ
それだのに僕はそれを引き抜いたらしい
赤い血を流させた
僕は世の中で最もかけがえのない
聖なる壊れ物を見つけた
だが僕に何が出来るだろう
愛するものを見つけても
それを捻じ伏せて欲望をぶつけ
体液を搾り出す大罪のほか 何も出来ない





僕は無力だ
悲しくなった
呻いたけど本当は叫びたかった
『何か無いのか 他に!』
君を昨日の姿のまま絵の中にも性の中にも
閉じ込めてしまいたくはなかったのに








だが僕も結局は
馬鹿で下らない頭の悪い男の一人に過ぎなかった
朝がやってきて君は聞くのだ
今しがた無くしたものに価値などないと云わんばかりに
ひろくん昨日 なんで泣いたのと










---EOF-









02.06.18
to be continued


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