BLACK BIRD この青くて広い空の向こうに 正体の分からない黒い烏のような化け物が棲んでいて それが黒い卵を散らしてあたし達は 今日も殺され 明日も殺される 昨日も殺されたし 明後日も殺されるだろう でもこれはずっと昔から続いて来たこと たとえ黒いものは落とさなくても あれはいつもあたし達を殺してきた 末弟も殺され 叔母も殺される 兄も殺されたし 父も殺されるだろう あたし達の側にも黒い鳥はいるのだと聞いた 甘くて有害なpowerというものに心を奪われているのだと 鏡を覗き込むようにあちらの鳥とほとんどそっくりだと あちらの黒い鳥とこちらの黒い鳥が相争い あたし達人間は 多分明日死ぬだろう 人が一つずつ世界をもっているのなら 明日は今日よりもたくさんの世界が死ぬだろう あたしは妹が空を憎むのを止めることが出来ない それがみんなの望む世界ならいいのだろう あちらも全てが黒いわけではないと聞いた 中には卵を落とすのを止めようとする白い鳥もいるのだと でもその鳥たちは合成ゴムの靴を履いている 平和を叫ぶ手が昨日はステレオを棄てた そうやって彼らは今日も殺し 明日も棄てる 昨日も殺したし 明後日も棄てるだろう あたしは彼らがそうするのを止めることが出来ない それがみんなの望む世界ならいいのだろう |