大きな手





確かめなければならない…
まだあそこに何か残っているのか
薄暗い光景のすすけた絵の具の中で
何もかもが焼かれた焼却炉の裏を
こちらの人は全てのことを隠そうとするから
掘り起こして掘り起こしてでも
あの身体を見つけなきゃ




道具は無い 素手で掘れ
牛乳瓶の欠片が踏まれた粘土の土を
ビニルの融ける野蛮な香り
いじめられた子の動かぬ瞳
苛立つような性の萌芽
うさぎ小屋 うろつく気違いの大人達
理科室の匂い 美術室の匂い 家庭科の憂鬱
血と痛みと共に全て 全て
思い出さないと




確かめなければならない…
このまま生きていくのかどうか
もしあの子が私を愛してくれるのならば
見ない振りを強いるその手に噛み付いて
世界でたった独りとなっても生きていける
その宝石を自らからも他者からも守って
どことも知られない場所で自由に遊ばせて上げなくてはいけない




世界には言ってはならない言葉もあるじゃないか
穢してはならないものもあるじゃないか
この偏った天秤の原因が全て私だというのなら
もはやあなた方の世界に義理立てをするのはやめる!




皮膚が破ける 血が裂ける
でも黒ずんで固い固い土を私の血でほぐして上げる
誰にも知られずに誰にも知られずに
十三年前の今日 十の私をここに埋めた
このままでは殺されると思って私を埋めた
譲歩に継ぐ譲歩の人生の中でいつか報われると信じたが
世界に変化の兆しは無く
ろくでなしどもにせいぜい利用されるのが落ちなら私は
一体何のために私は
小さくて柔らかい体を葬り去らねばならなかったのか
全ての少女時代と共に殺さなければならなかったのか





確かめなければならない…
奥深く土の中から掘り起こして
お腹が空いてはいないかと尋ねて上げねばならない
そしたら手に余るほどのドロップを上げる
きっとそのために私は大人になったのだから
あの薄暗い学校の裏
居場所の無かった少女を埋めた土を掘り起こして
掘り起こして抱きしめてあげるために
私は大きな手をもつ大人になったのだ








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