螺旋の見る夢 もしも人生が二度あるならば そのときは私も間違えまい けれどもし二度とないのなら 誤りを避ける術は無いだろう もしTにまだ耳と口とがあるならば そのときには答えが聞けるだろう けれどももしもう耳と口がないのであれば 答えとは断絶そのものである 私は今朝も灰色のホームを歩くのだが そこには砂利と霧雨と匂いだけがあって 答えは どうやら誰にも合図をしないで 静かに墓石へ入ったらしい 水のほとりならいいが 椛のあるところならいいが 問いつづけるのをやめたなら そのとき最も答えに近づくだろう そしてもし問いつづけるのをやめぬなら 線路に飛び込む日は永久に来ない 生きるが勝ちかほんとが勝ちか かなしや喜劇 食ってくれやい 二つの問いは細胞の中で螺旋を渦巻き 必ず不完全である自らの相手をなだめながら あろうことか 次の世代の夢を見ている |