東都だいあり



顔の飛ばされていく
東路の空っ風
銀座の横断歩道で
流れる背広に戦慄する
慣れぬハイヒールが痛い


新宿のネクタイは
諭吉を5枚出すという
あれ程いらぬ金もない
地下道は嘔吐の香り
平気になることの方が怖い



人の道 中央線
見上げれば富士が見える
天使の揺籃のような空
ある人が私を愛しているという
頭に生卵 ぺしゃりとぶつかる
そして私は気鬱になる



24センチの足場のみ許さるる朝
切符に血管を開く夢を見る
私は絶対にまともだ
これは私がまともな証拠だ
池袋でぼうとなる



帰りつけばはや十時を回る
そげ落ちた顔にクリームを塗る
そして寝床に横になり
夢もなく東都の夜は行く



私はあの人を愛しているのだという
他のものを全て拒んでおいて
愛だけを信ずるわけにはいかない
それでは宗教
そんなものは噛み終えたガム
ぺっと捨て・・・振り返るな



明日は10時
独りで渋谷へ行こう
ハチ公が待っている
彼もひとりぼっち









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