L'inutile
ジダンのお休み
「……!!」 昼間、ジダンが落ち込んでるのではないかと尋ねてきたアキが、よたよたのヨシプに鍵を開けてもらって居間に入って愕然とした。 酒と煙草の煙と安っぽい食品に含まれる香料のまざりあった匂い。居間はぐちゃぐちゃ。テーブルの上にはごみと空き瓶、空き缶の前衛芸術。目を右に転じれば台所は乱れきって、シンクのなかに洗っていない皿が積み上げられている。 ヨシプは「胃がムカムカする…」と言ってトイレに入り、人がえづく時の「オエッ」といういやな音を出しているし、当の主人は腰周りのカーテンを押しのけながら、居間のソファーに起き上がったところだ。 「や、やあおは…ウエッ」 「こ…。この…」 許しがたい光景だった。わなわなと震えるアキは、マフラーも解かないまま顔を真っ赤にして 「この酔っ払いがああ!!」 デリカテッセンで買ってきた惣菜のタッパーのカドが、薄い袋越しにジダンの鳥の巣頭に突き刺さる。 (了)
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