レヴォリュシオン エリート
プロローグII




プロローグ II



「それでは、採決を行ないます」
 広大な広間の中に、アルカンの澄んだテノールが響き渡った。
「代表者は順に札を上げ、間違いを防ぐために口頭でも一言お願いします。白札は死刑、赤札は無罪、青札はその他の刑罰です。
 では、クラブ『紳士連合』代表者より、順に」
 三〇ほども並んだ椅子の一番奥。一人の男性が立ち上がると、白札を見せて、言った。
「死刑」
 座ると同時に、次が立つ。白札。それは、延々と続いた。
「死刑」
「――死刑」
「死刑」
「…死刑」
 彼らは一人の虜囚の運命を決しているのだ。捕虜は壮年の男で、進行役のアルカンが着く机の斜め前に、兵士に挟まれて座っている。
 目隠しをされ、顔がほとんど見えない。自らの処刑を求める人々の声を聞いているのかいないのか、とにかく無反応だった。
 広間入り口の方には傍聴人がたかり、息を弾ませながら投票の行方を見守っていた。
死刑。死刑。死刑。――刑罰の後、釈放。
 どよ、と広間中の人々が発言者を見た。説明を求めるような視線に応えて、男性ユーザーが一段と高く、青札を掲げる。
「何故ならば【キング】は前王を、殺していない」
「次」
 アルカンが促す。死刑。しけい。しけい。と言葉が続き、途中で人々は、数えるのを止めた。
「投票結果を発表します。無罪0。処刑28。その他3。――陛下」
 アルカンの声と共に、満座の視線が、一斉に上座へと注がれる。
 王座には、マクシム・ソボルが座っていた。公章は肩からかけているが、王冠は見当たらない。王者にしては清潔で簡素な衣服を身につけていたが、やはり全身からオーラが滲み出して、その一画を特別に見せた。
 傍らには、美しい白い長衣を着けたアンリエット。新しい王は頷くと、意外とか細い声で言う。
「しかるべく」
「――虜囚【キング】、起立なさい。
 投票結果に従い、我が中央政府は、これより一時間の後、あなたをシテ革命広場にて公開処刑いたします。
 何か言いたいことはありますか」
「……」
 目隠しをしたキングは、耳を頼りにアルカンのほうへ向くと、乾いた声で言った。
「ない」
「では、これにて終了と致します。散会!」







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