コントラコスモス -14-
ContraCosmos



 真夜中、店に一人で帰ってきた林檎を見て、私は探索がやっぱりうまく行っていないことを確認せざるを得なかった。
 大体あのマヒトが若い女の子と、気を使いながら一緒に旅するなんて出来るはずがないのだ。流石に夜になる前に手を打たねばと思ったらしく、マヒトは林檎に手紙を持たせて一人街へ戻したのである。
 まあ林檎だってそこまで間抜けじゃないから、自分が理由をつけて帰されてしまったことは分かる。それでドアを開けた私が軽くのけぞるほど頬をぷーっと膨らまして立っていた。
 取り敢えずむくれる思春期を半地下の私の寝床に突っ込んでおいて、私は店に戻り、蝋燭を立ててリップが残したという簡潔な書置きを読む。

 これは戻ってこない。

私は三秒で読み終わってそう思った。

 リップはもう戻ってこない。
彼の水色の瞳の奥にうずくまっていた蟠る翳が、とうとう彼を捕まえた。

 そして私は何を思ったか、立ち上がるより先に蝋燭を消してしまった。このわけの分からない行動のおかげか、その後地下に下りるのにやたらと苦労した。






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