コントラコスモス -31-
ContraCosmos



「黒幕は、警備隊内部への浸透を目論む新進の財閥だった。王国内部の軍隊はそれぞれ権力と分かち難く結びついていて、いきおいその手綱を握る一部のための私兵的な存在となる。国軍は外務部の財産だし、蒼騎士隊は王の手駒だ。
 警備隊はその創立者の性格があって、例外的に独立色が強い組織だが、その戦力に目をつける連中の干渉は絶えずある。特に軍組織とのつながりを持たない者達は様々な手を使って内部に串を通そうとする。
 ……あれは、そういった老獪な大人たちに自らの苛立ちを利用され、誘導され、あんなことをした。盗賊の存在、被害報告、宿営地といわれた洞窟。全て虚報だ。
 彼らの目的は浮き足立ったショーンを唆して邪魔な上官たちを消させ、その後は恩を餌に南部隊を動かせる存在になることだった。
 ショーンに呼応した新兵の数は予想外に多かった。不満もあったのかもしれない。だが元々彼には他人を影響する才能があった。本来なら軍人として得がたいものであるその資質が、この時にはより多くの新兵を巻き込む原因となった。
 先発として内部に入った彼らはまず、報告された事由が何も無いことに戸惑っている仲間達を襲った。
 まさか内乱とは思わない。兵士達はあっという間に倒され、ショーンは一気に、十数名の兵士達を指図する指揮官になった。
 ――その頃、外で中からの報告を待っていた俺達は、素性のわからぬ兵達から突如襲撃を受けた。残されていたのは手練ればかりだったから、すぐに応戦したが、同時に先発隊からも襲撃され、大混乱になった。
 ある部下がやっとのことで逃れてきて、兵士達を指揮して我々を襲っているのはショーンだと告げるまで、一体俺達には何が起きたのかさっぱり分からなかった。
 俺は動揺したよ。ものすごく動揺したよ。何しろ洞窟へ入っていって目に入るものときたら、負傷した仲間やその死体ばかりだ。
 ここに敵はいない。それなのに仲間は殺されている。当の仲間によって騙まし討ちに遭った。
 ――冗談じゃない。地獄絵図だ。
 一つ、また一つと大切な同僚の死体を見るたびに、俺の中で何かが、ブツブツと筋肉のように千切れて行った。
 残った遊撃隊の仲間達と状況を確かめるべく奥へ進んだ。そこにはショーンと、その仲間達がいた……」




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