コントラコスモス -41-
ContraCosmos




 我が師にして親愛なる兄上。夜通し行軍し早朝コルタ・ヌヴォー(原文ママ)に無事到着いたしました。
 しかし既に手遅れでした。あの悪魔は一日で兵を引き上げたのです。その際、報せのあったとおり、聖庁の聖なる財を奪い、畏れ多くも教皇猊下と枢機卿数名を連れ去ったとのことです……。
 衛兵は果敢に抵抗したとのことですが、力及ばず、街は馬蹄に踏みしだかれ到る所で未だに家が燃えています。大聖堂と聖なる兄弟達は無事でしたが、これは神のご威光というより、キサイアスの悪知恵の結果のようです。かの魔の魔にして魔なる男は聖職を弑いすることの不利益をよく心得ているのです。
 しかしながら予想より街への損害は少なく、やはりそこは神のご慈悲が働いたとしか思えません。住民たちの話によると、彼らは何故か午後もかなり遅くなってから行為を開始したらしいのです。すなわちそれは通常ほど長くは行われなかったのです。
 一部の損傷は激しいとは言え、街が原型を保つのみならず半分以上生き残っているのは奇跡です。北部のマラガ人居住区であの悪逆なる騎士隊がどのような蛮行を為したか、兄上もよくご存知のことでしょう……。
 じきノップ公が到着するとの由、談義した内容はまた追ってご連絡します。今は取り急ぎ是迄。


(マチュア公弟ノーリスの書簡)



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