L'inutile
わるいひとたち




 別れた時は、それほど悩んでなかったの。でもだんだん、苦しくなってくる。

 ヨリを戻したいんじゃないの。逆に加速度的に忘れていってる。ヤコブとの日常。ヤコブとの距離の取り方、彼のくせ、彼の感情、彼の意地。

 一緒に、彼のことを好きだと思う気持ちが少なくなっていく。あんなにお世話になったのに……。たった三ヶ月で、愛情が薄れていくなんて。




『私……、悪い人間だ。』




いったんそう思いだすと、その罪悪感がなかなか消えなくて。
かといってもやっぱり忘れていくんだけど。
なんか苦しいし、ほんとイケてないわ、私。






 アキのうちあけ話を聞いていたヨシプは、甘ったるい林檎ジュースに下ろされたストローから口を離し、首を振った。
「君は悪くない」
 目を丸くする彼女の前で、珍しくまた言う――。
「全然、悪くない」






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