L'inutile
おいしい水












わたしは愛したかったけれど恐れていた
わたしは自分の心を救いたかった
けれどその愛には秘密があった
不安は愛を殺してしまう
おいしい水だよ おいしい水だよ 友よ




わたしは今 とても強い気持ちでいる
すべて ゆるしてしまおう
わたしの家の扉は開かれている
わたしのこころの扉も開けよう
おいしい水だよ おいしい水だよ 友よ
















 そんなわけで彼等は今もロケット通りのアパルトマンに二人で住んでいる。
「ジダンがびびって背信未遂事件」以来、ますますヨシプの立場が強くなって、ジダンが気圧されて負けつつあるのが身内での最近のネタ。

 ヤコブは短い休暇を終えて相変わらず内外を飛び回り、クリスティナはあっちこっちで元気よく気焔を吐いて婚期を逃し、マチルドはヨシプの周りをもの言いたげにうろうろ。

 アキはおおむね温厚に生きつつ時々フランス人にキレ、ミミは子育てに追われてデミトリの旗揚げ公演を見にいくヒマもない。





二人の周囲を人々が星のように巡る。
運と不運がその境をはじけ飛ぶ。


幸福は水に落ちた絵の具のように一時淡く広がり、
人知れずやがてほどけていく。


二人はそのさまにひたすら耐える。
生まれる時も、消え入る時も。
身に覚えのない幸福に、ひたすら耐える。







どのみち両人何をしようとも
社会では役立たずのリニュティル(ごくつぶし)。
ここらでまずは小休止。
キャスト全員より深々と一礼申し上げます。





この与太話の続きはまたいずれ。
続編にて。






(了)






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