4.「18歳を迎えたあなたへ
  〜カテドラルとの大事な約束〜」





トードー・カナン君


 お誕生日おめでとうございます!
18歳を迎えたあなたは、今日から成人と認められ、晴れて大人の世界に仲間入りをします。カテドラルはあなたにその資格があることを認め、心よりあなたを歓迎し、そしてあなたとカテドラルをつなぐひとつの大事な約束についてお知らせします。



【大切な義務】
 あなたは、18歳を迎えた今日から、23歳になる2311年06月08日までの間に、カテドラルにあなたの遺伝子を提出しなければなりません。これは、あなただけではなく、ニンブス・シティに住む全ての成人が、社会の維持のために等しく果たさねばならない大切な義務の一つです。
 提出された遺伝子は必要になる時までカテドラルで大事に保管されます。そして必要となった時には、あなたのナチュラル・パートナーであるリンダ・ウェルスさんの遺伝子と組み合わされ、新しい生命の礎となるのです。
 あなた自身がそうであったように、その結果生まれた子供をあなたやリンダさんが養育する必要はありません。またこれによって、あなたがリンダさん以外の人と自由に結婚できなくなる、というようなこともありません。
 あなたの遺伝子は計画に基づいた人口調節のためだけに使用され、なんらあなたを縛ることはないのです。



【もう一つの道】
 しかし、もしかするとあなたはこう考えるかもしれません。自分はリンダともっと昔ながらの自然な方法で子孫を残したい、と。
 それは義務を果たすために考えられるもう一つの道です。カテドラルはあなたの意思を歓迎し、婚姻の有無に関わらずその快適な出産とその後の育成を全面的に応援します。
 しかしこの場合には、リンダさんとの間に完全なコンセンサスが必要である点に注意してください。リンダさんとじっくり話し合って双方が納得したら、それぞれカテドラルに対して「提出延期願い」を提出してください。その後、2311年06月までに妊娠が確認されれば、二人はともに義務を果たしたと仮認定されます(※)。
 この道は最初の選択に比べて困難が多く、面倒に思われるかもしれませんが、その収穫は決して少ないものではありません。きっとあなたの一生の思い出に残る出来事となることでしょう。
 リンダさんとあなたは遺伝子的に最高の相性を持つ、つまり生まれついてのパートナーです。自分たちの義務をどのように果たしたらいいかゆっくり考え、お互いに素直な気持ちで話し合ってみましょう。
※ 健康な胎児を出産した後改めて義務完了認定されます。
詳しくはあなたの担当官に問い合わせて下さい。




【未来のためにあなたがすべきこと】
 それでは義務を果たすために、あなたが取り得る道をまとめてみましょう。
 一つ目の道は、2311年06月08日までに、カテドラルに自分の遺伝子を提出すること。
 二つ目の道は、2311年06月までに、パートナーと合意の上、昔ながらの方法で子孫を残すことです。

 どちらの道を選択するかはあなたとパートナーの意思に任されます。分からないことや不安なことがあったらいつでもあなたの担当官カリーナに相談してください。
 また、あなたの周りにいる大人たちにも色々意見を聞いてみましょう。彼らはあなたの疑問に快く答えてくれるでしょう。

 立派に義務を果たした時、あなたは本当の意味で社会の一員となります! エア・シティを維持するために続けられてきた大事な約束を受け継ぎ、あなたの貴重な遺伝子を次の世代に伝えましょう。





ニンブス・シティ厚生局
局長クリストフォロ










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