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「君は随分若いようだが幾つかね?」 「―― 十八です」 「思慮分別を求められてもいい年頃だとは思わないかね?」 「思います」 「では、どうして子爵と果し合いなどしたのかね」 「決闘はあらゆるところで行われていることを、査問官殿はご存知ないのですか」 「しかし、だからといって規律違反ではないということにはならない。 君達はおそらくこのような査問自体、野暮ったい手続きだと忌々しく感じているのだろうが、芝居のような決闘ごっこに夢中になってもらうわけにはいかないのだよ。 ここは、夢から醒める為の場所だ、現実は厳しいぞ」 「…………」 「……大体、君は公国騎士でありながら、戦場ではない場所で人を傷つけたことを恥じる心はないのかね? 子爵は顔面にひどい傷を負った。個人的な理由で貴族の顔に傷をつけたことに対し、責任をとらねばならないとは思わないのかね?」 「…………」 「何とか言いたまえ」 「……もしも私の思い違いなら申し訳ありませんが、子爵がそんなことを? 怪我について私に謝るようにと言ったのですか?」 「…………」 「……彼は、そんなことを言う人間ではないと思っていたのですが。」 「君達は……、決闘をしたのではないのかね?」 「決闘しました」 「仮にも名誉を賭けるからには憎しみあっているのでは?」 「でも、命がけで刃を交えるとわかるものなんです。なんとなく、相手の性格や性根が。 査問官殿にもそういった経験がおありでしょう?」 「…………」 「子爵は酒癖は悪いですが、……逆恨みをするような男ではないと思っていました。 それとも私の、勝手な思い込みだったでしょうか。残念です」 「…………」 「…………」 「シバリス准尉。処罰如何については、追って上官に連絡を入れる。 本日はもう結構だ、通常任務に復帰し給え」 |
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