・・恋をしている・・







トーキオにも木の葉ざわめく道がある
いっせいに寄せて来る波打ちのような下り
ざわざわ…と ざわざわ…と
泡立つ中を独り歩く






「これが私の音である…。」








トーキオにも我慢できないことがある
いや寧ろものがあるだけに枯渇は堪える
ざわざわ…と ざわざわ…と
分からず屋の血がうごめく






「これが私の夜である…。」







それはいつも同じ音で
私はそれに揺さぶられること無く
日課のように苦悩する…
トーキオはとても容易いところ
たった独りで生くるぶんには






トーキオにも未知というものがある
蛍光灯の下のお化けは殊更に人を脅ろかす
ざわざわ…と ざわざわ…と
私の音に知らぬ間 あなたの音が紛れ込む
それで私は寂(さむ)しく笑う…






「恋をしている…。」






うつむいて独り呟く
この十月の寒い終わり
それでいっそう孤独である








---EOF-









02.10.21
to be continued


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