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"ランチメニュー"










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scene1「北朝鮮問題」






「新井ちゃん。昨日の朝テレビ見た? 北朝鮮問題について討議してたやつ(ズッ)」
「あ、見た見た。10時から10チャンのだろ?」
「10チャンだっけ? (ズッ)12チャンじゃないっけ」
「あ、いいな加藤さんの、お味噌汁ついてるんですね。俺も定食にしときゃよかった」
「渡邊は何頼んだんだっけ、カレーか」
「ウマイ?」
「ええ、まあまあウマイっスよ」
「じゃ今度頼んでみよ。定食メニューちょっと飽きちゃった(ズズズッ)」
「テレビって、鳩山がぎゃあぎゃあいってたヤツだろ」
「そうそう。純ちゃんも損だよなあ、こんな時に首相やってて」
「純ちゃん? 小泉のこと?」
「(笑)……加藤さん、お知り合いですか」
「いや、知りやしないんだけどいいんだよ。純ちゃん、純ちゃん、小泉の純ちゃんって感じじゃん」
「純ちゃんなんだ(笑)」
「そうそう」

--- もぐもぐもぐ。 ---


「あれだよね、もっとさ、強い立場でガツンと言ってやんなきゃ駄目なんだよ、ああいう手合いはさ」

--- くちゃくちゃくちゃ。 ---


「それにしても何考えてるんだろうね、あの国ぁ。突然子供さらわれた親の気持ちにもなれよ」

--- ズズー、ズズー、ズズズー。---


「どうせまたなんか前の戦争のこと持ち出してくんだろ? 謝って金出してるじゃんかなあ」

--- …げふ。---


「ごちそうさーん! お勘定お願い!」






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scene2「三浦さんの香水」






「お前、今日はカレーなんじゃなかったの」
「いや、なんでか今日はさんま定食の気分」
「…ははは」
「おう。そういや渡邊さあ、お前の席の後ろに最近若い女の子来ただろ」
「あ、えーっと、なんだっけ。三浦さん」
「三浦さんっていうんだ」
「来たっけ?」
「ホラ、細っこくてさあ、髪の毛こんくらいで…」
「いつも新井さんの横来て、エアコンの温度変えていく子ですよ」
「ああ、分かった。あの女ね。やめて欲しいよな、俺暑いのにさー」
「フロアの中らへんは寒いんですよ」
「それなら着りゃあいいじゃねえか。だから俺いつもその後ですぐ温度17度くらいに下げてる」
「……ははは」
「あの子、いいにおいのする香水つけてるよね。俺、いつも擦れ違ったりするとくんくんやっちゃう」
「そういや変なにおいするな」
「アナスイのですよ。結構高いヤツ」
「あ、何渡邊。やらしー、なんで銘柄まで分かるの」
「いや、あれは最近女の子、皆つけてるんですよ」
「彼女とか?」
「はあまあ」
「職場で同じにおい嗅ぐと、変な気分になったりしない? なったりしてない? 色々思い出したりしてさあ」
「いや、別に…」
「俺、最近じゃにおいがして、姿が見える前に彼女が来たの分かるのよ。あ、なんかあの子のにおいがするなーと思ったら来るの。分かるんだよ」
「なんだそりゃあ(笑)、偶然だろ」
「本当だって。いいよなー、ああいう女の子来ると職場が和むよなあ? な、あの子かわいいけど、意外にお尻でかいよね」
「ああ、結構そうですね」
「ちょっとエッチっぽくていいなあ〜」
「好きだねえ」


--- お待たせいたしました。
中華定食、さんま定食、カツカレーでーす。 ----




「お、なんだかおいしそうだな。いただきまーす!」






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scene3「派手なニュースが欲しい」






「話は変わるけどアメリカのイラク攻撃ってあると思う?」
「あるんじゃない? 11月の半ばとかって言ってなかった? どっかで」
「困るなー…、僕11月に休暇取るのに、また飛行機が飛ばないなんてことになったら」
「要はフセインぶち殺しゃあいんだろ?」
「(笑)まあねえ」
「どうしてあそこの国民って我慢してんだろうね。反乱起こせばいいのにさー」
「そんな知識水準にないんじゃない? 王様は絶対なんだよ、やっぱり現代的な教育がなされないことにはさ、イスラム世界は閉じたまま…」
「なんか最近、何考えてるんだかわかんない連中が増えてきてヤになるね。今日もさ、地下鉄の駅の中に何人? みたいな連中がいっぱいいて」
「またテロとかあるのかなあ。困るなあ…」
「なーんかもうわけのわからん言葉でずーっと盛り上がってうるさいわけ。日本なんだから日本語で喋れってんだよなあ」
「加藤ちゃん、英語喋れないじゃない」
「俺は一生日本から出ないからいいんだよ。日本人は強いのだ、出稼ぎするような立場じゃないもん」

--- おまタセシマシタぁ。ビビンバ定食三人前デース。 ---



「でも最近、業務平坦で退屈だからさあ、俺としてはいっちょ派手なニュース欲しいよ」
「あ、それ分かる。9月11日はわくわくしたもんね、ワールド・カップとかさ」
「あの興奮はどこへ行っちゃったのやら」
「何もないと困るよね。昼飯のとき喋ることもないし」
「イラク攻撃やったらさ、湾岸戦争の時みたいな映像届くと思う? 朝までぶっとおしでニュースやってると思う?」
「いや、それは困りますよ。僕、休暇なんですから」




--- くちゃくちゃ。 ---
--- もぐもぐもぐ。 ---
--- ズズー。ズズズー。 ---





「………。ちょ、ちょっと、すいません(ガタン)」
「…どうしたの、あいつ? 顔色悪いぜ」
「なんかすごい勢いで食ってたからさ、腹具合でも悪いんじゃない? トイレ行ったし」
「でも口押さえてたぜ。二日酔いかね」
「まあそのうち戻ってくるだろ」



--- くっちゃくっちゃ。 ---
--- ズズー。ズズズー。 ---





「なんか…、アレだね」
「ん?」
「ここの飯も飽きて来たね」
「メニューのほとんど食い尽くしたしな」
「どっかに新しい店でも出来ねえかなあ」
「どうかねえ」
「ああなんかあっちもこっちも、ぱっとしたことねえのかなあ」









「(トイレの中)おえー。げげー」







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"ランチメニュー"
FIN.





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02.10.06
to be continued


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