コントラコスモス -14-
ContraCosmos



 その城は、星をちりばめた蒼い空の下に、どこか寒そうな姿で立っていた。そう見えたのは実際秋の夜風がリップの身体を吹く度ごとに冷やしていたからかもしれない。
 或いは城の背後に流れるカラハ河がその深く黒い水で、足元から城を冷やしているからかもしれなかった。
 トラスは城の脇に連れを案内すると、馬から下りて鉄の扉の鍵を取り出した。リップもそれに続いて、彼が開けてくれたドアを押さえながら、宿で返り討ちにした兵士たちから失敬した馬を手馴れた動作で中へ導く。
 よくある造りの騎馬用エントランスだった。天井は吹き抜けで、中央に井戸があり、その周囲を馬小屋、武具置き場などがひっそりと取り巻いている。
 リップたちは馬を納めてやっと身軽になると、蝋燭に灯りを点し、狭い石造りの階段を昇って二階へ出た。
「ク・サンジュ家が夏を過ごす別荘のうちの一つなんだ」
 白い布に覆われてしん、と冷え込んだ応接間に入ると、トラスは言った。
「構わんから、布を外して掛けてくれ。俺は台所から酒や食い物を持ってくる」
「サンジュ卿が激怒するんじゃないか。そんな勝手なことをしたら」
 心が狭くて怒りっぽい男をネタにした軽口のつもりだったのだが、
「――いや、卿は死んだ」
 トラスの返事は静かなものだった。
「一番最初に殺したんだ」
 リップは部屋から出て行く旧友の背中を見つめる。






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