コントラコスモス -16-
ContraCosmos



 翌朝。
「え――?! 閉めちゃうんですかぁ?!」
 と、不満そうな林檎を外に押し出して、私は表の店の臨時休業を決定した。深夜の労働のせいで眠いのだ。しかもまだ後二日続く。
 どうせ二、三人が茶を飲みに来るだけの店だ。しばらく閉めても問題ない。
「も――ッ。勝手なことばっか言って……」
「まあまあいいじゃない。林檎も久しぶりにお休みでのんびりしたら?」
 と、屋根裏へ帰りがけ(あの後、花屋のところへ行ったらしい)、通りかかったリップがフォローする。林檎はこないだから癖になっているらしい、頬をぷーっと膨らます例の顔で怒りのカタマリになって帰っていった。
 私は表に錠を下ろし、窓のカーテンも閉めて、僅かに差し込む光の筋に踊るほこりを一撫でして地下へ降りた。
 眠たいのは本当だった。リップと一緒で、昨晩はほとんど眠っていない。
 寝室で髪留めを外し、くせのついた黒髪を肩まで流した。それから、荷馬車が道を走っていく轍の音を聴きつつ、部屋の中で我ながら長いため息をふーっとつく。




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