何かがあったわけではありません。
いや寧ろ、何もなかったんです。
 いつも思い出してはそう気付かされる。
私たちの間には何一つ起こらなかった。
今になってそれを不自然と感じるほどに。
 そしてその理由を探ったとき
私はくつろいでいた自分が許せなくなるのです。
 彼女は密かにいつも張り詰めて
私を守っていたのだと気付かされるのです。






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