「一体なんだあいつらは? バカなガキといい鈍そうな坊主といい出っ歯のババアといい、冷えた残飯のような連中だな」
店が閉まり、興奮した林檎が帰り、私が沈黙したまま地下へ降りると、ヤライは工房で椅子にふんぞり返り、冷笑を浮かべて彼らをそう評した。
机には私の持ち物である書物や資料が勝手に引き出されて散らばっていたが、もともとは自分のものだ、と言われれば対処の仕様がない。私は壁際に立って、遠くから彼を見つめた。
昨晩の記憶がめぐる。頭はまだ痛い。手首にも腹にも乳房にも傷があって、打ったかひねったか、背中が何かの拍子に痛む。
そして何よりも、萎縮した精神が未だに戻ってきていなかった。このまま一生会わずに過ごしたい、もうどこかで死んだかもしれない。そう思っていた相手が今、目の前にいて昨夜私を縦(ほしいまま)にした。
……情けないことだと自分でも思うが、それだけで体が萎え、まともな思考が半分以上殺されるのが分かる。
「……言っておくが、俺はお前がこんな馬鹿げた場所にいることを許す気はないぞ」
ヤライは蛇の眼光で私の甘えを見据えて言った。
「お前は王国の資産であり王国の毒物であり何より俺の娘だ。任務からも、俺からも、勝手に逃げ出して済まされるなどと思っているなら考え直せ。
もっとも、思い知ったことだろうがな。俺を出し抜こうなんて千年早い。同じ手は二度と食わんぞ」
「…………」
今夜は、契約でコーノスのところに薬を届けにいかなくてはならない。それを、どのようにすべきかと考えていると、ヤライが言った。
「今回はここで仕事がある。そのためにはこの場所もお前の立場もまあ悪くない。
実行の日まではここでお前も普段どおりに生活しろ。無事に事が済んだら、お前を王都に連れて行く。分かったな」
「…………」
そしてまた、あの生活をするのだろうか。私が表情を翳らせて視線を反らすと、止めの一言が投げられる。
「逃げ出してみろ。今度は間違いなくお前の残飯どもを始末するぞ」
「――……」
ふいにヤライは書物を投げ出して私に命令した。
「来い」
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