コントラコスモス -21-
ContraCosmos





 午後三時。
いつもの通りにマヒトがやってくる。
林檎が笑顔で迎え入れる。
じきにリップも来るだろう。
ヤナギは喧嘩相手が来たので嬉しそうだ。
 私は馴染みの茶器に調整したハーブを入れ、湯を注ぐ。
人によって濃度の好みはあるものだ。それに馴れもある。
 最初はジト目でこちらを睨みながらハーブをなめていたマヒトも、今ではかなり濃い味を嗜むようになった。
 実際、どんなひどい味の物でも人間馴れられないことはないし、嚥下できないものでもな――
「どうした?」
 私はマヒトが茶を飲もうとしないばかりか、カップの両脇に手を置いたまま、触れようとさえしないことに気がついた。
「くさい」
 マヒトの顔が歪む。
「これ、魚が腐ったような臭いがするぞ」
 いつもまっすぐに人を見据える透き通った両目が、息の止まった私の顔を見る。
「ミノス、唇のところに、白いものがついてる」






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