コントラコスモス -25-
ContraCosmos





昨日、何だか変な夢を見た。
俺は誰だか知らない少女を背負って歩いている。
少女は小さくて、多分4歳か5歳くらいで、
病気にかかっている。
というかじきに死ぬ。
何故だかそれは分かっている。
この辺は、もう知ってる物語を最初から読むような感じだ。
俺は道々女の子と話す。
自分の持っている知恵のありったけを彼女に注いで、
何とかその子を安心させようとしている。
大丈夫。
君が悪い子でも嫌いにならないよ。
どんなひどいことを考えたとしても
君を見放したりしないよ。
そんなふうにわざと捌けたような顔をしなくても
大丈夫。
俺は妙に落ち着いていて
そう話しつづけるんだけれど、
少女はいつ迄もはっきりしない。
怒っているんだか、納得してるんだか、
聞いているんだか、聞いていないんだか。
ただ時々背負い直すために地面に下ろすと、
その場に座り込んだまま俺の方をじっと見てる。
どれくらい歩いたのか、
ある時少女は死んだ。
ぼろ、ぼろぼろっと砂糖が砕けるように四肢が落ち
振り向いたらもう服しか残っていなかった。
俺はそれを川に流し、また一人で歩きつづけた。
どこを歩いてるんだかよく分からない。
何だか荒野にいるような、ぼんやりしてると聖庁の
回廊にいるような、見知らぬ街にいるような。
誰だか分からないがよく知ってる人間が、
あの女の子はどうしたんだと聞く。
俺はあああの子は死んだよと言う。
不思議な心持になった。
すぐ死ぬと分かってる女の子に、
何だかしょうもないことをたくさん言った。
天国の話なんか一つもしないで、
ただ俺は、
その子を安心させたかっただけなんだ。
すくなくとも自分一人は、
いや、自分などにそうされたって嬉しくも
なんともないだろうけど、
君の味方だと。
そう伝えたかった。
そのために、死ぬと分かっているあの子に
あんな話をしたんだなと俺は考えた。


夢から醒めたとき真っ先に、お前に話したら
なんて言うだろうと思った。
何だか小難しいことを言われて、煙に巻かれて、
リップ共々散々いじられるのが落ちだろう。
それから、自分が今コルタにいないことに
ようやく気がついて、寂しくなった。


話がしたい。
その感じが喉元に詰まって一日苦しかった。
まだブラネスタイドに入る前だというのに、
コルタへ戻りたい。
医学会は楽しみだ。
旅の仲間も親切だし、新しい街々は珍しくて楽しい。
だが、お前の挨拶や薬草話やうんざりした時の
声が聞きたい。
こんな思いをしながら側にいないのは馬鹿げてる。
人はそういう真似をするべきじゃないと思った。


長々つまらないことを書いたが許してくれ。
俺は、この手紙がどれだけつまらないものか、
それは、なんとなく分かっている。
だからお説教も返事も必要ない。
それでは。

別に手紙も書いたが、リップ、林檎、ヤナギ氏、
コーノス氏、家主のご夫婦によろしく。
それと、花屋のご主人にも、よろしく伝えて欲しい。



(ノルデンブルク マヒト)




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