コントラコスモス -28-
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その時、私とヤナギは店で馬鹿な菓子を食っていた。別に普通の砂糖菓子なのだが、周りを加工して、見た目石ころとそっくりに作ってあるというイベント用のびっくり菓子で、子供に人気があるそうだ。話のタネに、とヒマなヤナギが持ち込んだのである。 かなり甘いので生ハーブと一緒にそれをかじっていたら、ものすごく乱れた足音が聞こえて、店の扉が破られた。 「……なんだ、お前?」 私は呆気にとられて全身汗だくになり、ヨロヨロとカウンターまで進んで来たリップを見つめた。 「み……、水ちょうだい……」 乱れた呼吸でやっと言うと、カウンターに突っ伏す。えらく慌てているようだ。 「何よ、ばったり昔の女にでも会ったの?」 リップは差し出した水を一杯あおると、石をガリガリかじりながら(彼にはそう見えただろう)ヤナギが言うのを、夢の中にでもいるような奇怪な顔つきで眺めた。 と、 「先輩!!」 ばーんと一呼吸遅れてまた扉が開き、リップの体が飛び上がった。 「うわあ!」 入ってきたのは見知らぬ若い男だった。走って追いかけてきたのだろう。顔は紅潮しているし、赤い巻き毛が八方に乱れて、何か少年ぽい印象を人に与えた。 「やっと見つけましたよ、先輩! 逃げないで観念してください!!」 「えー。リップちゃんサイテー。男の子にまで手ェ出してたの?」 石の塊を口の中でガリガリ噛みながら(そう見えたろう)ヤナギが掌でリップの一の腕を叩く。 次の瞬間、 「ああ、畜生!!」 とリップは爆発した。 「何で俺ばっかりこんな目に遭うんだ!!」 -了-
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