何ヲ、ヤッテルンダ。
吐き出したものは言葉ではない。
魂そのものだった。
もう少し早く来れば助かったかも知れなかったのに、どこをほっつき歩いてました?
信じることが出来なくて何度もイとショーンの顔を往復した。悪い夢だと思いたかった。
ショーンはひどく楽しそうだった。若い顔を紅潮させ、額に汗し、自らを見失うほど酔っていた。あれほど渇望していた「力」を、手に入れたのだから。
人が人を動かす「力」。人が人を殺す「力」。
こいつは殺せ、こいつは生かしてやってもいい。
そうやって決めることが出来、他人から恐れられる男に、
一目置かれる男に、彼は。
なりたかった。
僕は優しい男なんですよ?
彼に選ばせて上げたんです。右手か。
――ボレアか。
それを聞いた瞬間、目の前が真っ暗になった。まるでブツンと縄でも切れたみたいに、普通の格好で立っていることが出来なくなった。
痛かった。
何もかもが痛かった。
息をするだけで肺に針が立たるようで、その痛みを逃がそうと、悶えながら俺は、
「―――――!!!!」
血を吐き散らすように、気違いじみた金切り声を上げた。
――気づいたときには、その場にいた十三人全員を切り伏せていた。
殺したのは、ショーンを含めて新兵ばかり三人。ひどい殺り方だった。頭蓋骨が滅茶苦茶になって潰れた昆虫みたいだった。
転がる体の中でボレアが真っ青になって震えていた。
当然だろう。部隊の人間同士が殺し合う場面を目にして、痛めつけられない兵士はいない。
彼の驚愕し固まった顔を見たとき、やっと我に返ったような気がする。
―――ああ。俺は。
自分よりも若い、自分よりも下位の、自らの部下を殺してしまった。怒りに任せて、弁明の機会を与えることも無く。
たった十八の子供を三人も、この手で叩き殺した。
殺したくなかったのに。
殺したくなかったのに。
この手で。
……憎んでなどいなかったのに。
それどころじゃない。
世界にこれ以上の居場所などないと、舞い上がるほど仲間達を愛していたのに。
驚いた。
俺は、こんな人間だったのか。
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