耳の奥底で、低い物音がゴロゴロと鳴っていた。
 春が近づいているのだろう。
額を押さえたまま思う。
 春は嵐も連れてくる。
低い物音がゴロゴロと鳴っている。
 遠い雷鳴 ―――――。




 ふと、冷たい空気を感じて瞼を開けると、長い間瞑っていたせいで落ち着かない視界の中に、ミノスが立っていた。
 すぐ側だった。
 コーノスは笑い、空いている方の手で彼女の手を取った。



-了-


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