コントラコスモス -36-
ContraCosmos






「!」
 五桁の数字を合わせると閂が外れ、開錠するはずの鍵がびくともしないことにリップは愕然とした。
 上水道の脇からコーノスの執務室へ通じる狭い通路。その扉の開け方は、ミノスを通じて彼を知ったコーノスが随分経った後、「まあいいだろう」と教えた。
 それはそのまま二人が彼に許した無造作で簡潔な信頼の証だった。それが知らぬ間に変わっている。新しい符号を知らぬリップはただ、冷たい鉄の格子を掴んで揺することしか出来なかった。
「…………」
 薄闇の中、彼は疎外された人間の傷ついた表情でしばし扉を見つめる。
「クソッ!!」
 やがて悪態が石造りの天井に響いて消えた。






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