コントラコスモス -38-
ContraCosmos



 この日、いとも敬虔にして高貴なるブレシア公アルベルティスは領内を騎馬で通る北ヴァンタス公キサイアスを止めて尋ねられた。曰く『貴殿、行(ゆ)く方はいずれか。またどのようなご用の向きでそこへ行かれるのか』
 ブレシア公の偉大さに打たれた北ヴァンタス公は臣下のように下馬してこれに答えた。『私は数々の過ちから今、恐ろしい破門宣告を受けております。これより聖都へ赴き、教皇猊下にお目通り願い改心を示し、特赦を頂ける様嘆願に参るところです』
 加えて曰く『私はこれまで享楽と放蕩の限りを尽くし、また民や臣下共にもこれを許して参りました。それ故この度は側近の者共も連れ聖都へ詣で、大聖堂にて悔悛の儀を受けさせる心積もりでございます。どうぞご領内の道行何卒ご容赦願います。今、我らは短剣一つ身につけておりませぬ』
 寛大なるブレシア公は大いに肯き、更に問われた。
『騎馬の後ろに連なる馬車数台の中身は何か?』王曰く、『神へ擲つ財産の諸々でございます』
 いとも敬虔にして高貴なるブレシア公は慈悲深くこれら悔悛の王の通行を許された。また先行きを心配する北ヴァンタス公を力強く励まされたのである。


(史書「いとも敬虔にして高貴なる
ブレシア公アルベルティスの生涯」より)




<< 目次へ >> 次へ