コントラコスモス -39-
ContraCosmos |
駄目だ。 内部に投入された分、外部の兵士の数は少なくなっていたが、それでも満遍なくコルタを覆っていた。この白昼ではどこから出て行っても、必ず見つかる。 私は家の壁と壁の隙間で呼吸を整えながら、夜になるのを待とうと決めた。それ以外に脱出の仕様がない。 それに、北ヴァンタスの軍の持つ時間も無尽蔵ではないはずだ。コルタの軍備は前からお話にならないほど手薄だったが、周囲にはその守備に責任を負う領主たちの兵団が幾つもある。コルタ蹂躙の報せが届くのもそう遅くはないだろう。 戦争をするにはこの街は最悪だ。同様に囲まれれば対処の仕様がない。だからキサイアスはここに長居は出来ないはずなのだ。今夜をやり過ごせば切り抜ける機会は増える。私はそう信じて汗を拭った。 不調は相変わらずだが半時間ほど前から視界が徐々に戻って来ている。物陰から大聖堂の尖塔を仰ぎ見た。 まだ街は静かで、放火や略奪の起きている気配はない。コーノスの読み通り、王は混乱を禁じているのだ。人々は逃げられず不安げにうろうろしているが、パニックは起きていない。遠目には、教会もひっそりしているように見えた。 あそこで何が起きているのだろう。私は喉もとを押さえながら考えた。キサイアスは教皇をどうするつもりだ。 |