コントラコスモス -44-
ContraCosmos


 王キサイアスは略服で既に居室を出ていた。教皇を幽閉している西棟に、狂信者の集団が奪還を叫んで突撃してきたという。
「世の中には面白い連中がいるな」
 呟いて執務室で警備隊による鎮圧の報を待っていたが、その壁をも震わす爆薬の音が二度、三度と聞こえるに接して、無表情な仮面の下、奇妙な感触が降り積りつつあった。
「どこから金が出ている……?」
 火薬は今のところ大陸に存在しない、帝國から船便で持ってくるほか手はない。ルートも限られ、至って高価だ。
 それを何故、教皇を救い出そうとするような時流に見合わぬ集団が持っているのか不思議だった。しかも、その人数はたとえ最新の武器を持っていたとしても無駄死にに近い規模に過ぎない。
 そんな現実的でない少数派の連中にわざわざ出資したのは誰だ? 何故貴重な火薬を無駄に使わせる? 何のために――、或いは。
 その時、血相を変えた騎士が一人、執務室へ飛び込んできて跪いた。
「申し訳ございません、陛下。地下から例の坊主が連れ出されました」
 これか。
「見張りの兵士が眠らされていました。入城記録を洗いましたところ、警備隊の少尉が不審な人物を連れて突入騒ぎの三十分ほど前に入城しています。内通者かと思われます」
「全門を直ちに閉じろ。西棟の連中も、その内通者と侵入者も全員間違いなく消して報告しろ。但し、坊主は殺すな」
「はっ!」
 畏まった騎士を見ずにキサイアスは立ち、つかつかと歩んで外へ出ようとした。警備の騎士たちが慌てて扉を開き、主人の後ろへ付き従う。





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