scene 2








 それがもう、頭の中で動き出して照明の下で息をしている。時の止まった舞台の上を、ゆっくりと歩いていく。
 耳が熱かった。血潮が体を巡るように、自分の周りでぐるぐると状況が動いてるのを感じる。そして体の奥の奥、骨と骨とが接するその狭間から、強い、声のもれそうな甘い興奮が再び突き上がるのを、奥歯を食いしばってやっとのことで我慢した。



人が「面白い舞台」を目指して個別に一斉に動く。
それがなにやら猛烈に嬉しかった。
芝居を作ろうと思った。
罠でもヤケでも赤字でももう構わない。
とにかく芝居を作ろう。
芝居を作ろう。
後のことはそれから考えよう。














 同じ時、灯りの落ちた居間では着信音を切られた電話機が、また飽きもせずいそいそと無言電話を録音する。






第三章 了



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