scene 2






ブーンブーン。
ブーンブーン。





 バイブ着信で震える携帯に、布団の中からにゅうっと手が伸びる。魚に飲み込まれるみたいに端末がシーツの間に消えた後、中からピ、と電子音がして、掠れた声が続いた。
「…はい…。誰?」
『…やっとかかった。俺だよ』
「あ、ヤコブ…。おはよ」
 ばたん、と掛け布団がめくれてその下から乱髪のクリスティナが表れる。
『…おはよう…?』
「アレ? …なんか辺りが暗いね。今、何時?」
『寝てたのか? 声がヘンだぞ。朝から何度も何度もかけてたのに、全然通じなかった』
「あー。ごめん。明け方まで飲んだくれててさ。うーん、眼鏡が見つからないなー。
 ていうか、今は今日? 朝? 夜?」
『…今は日曜日の二〇時だが』
「あ…、りゃま。本当? 一日中寝てたわ。掃除も洗濯もせんと。寧ろ腰痛い」
 うーんと体を伸ばすと、背骨がボキボキ鳴った。
「きっぱり無駄にしたなあ。でもまあいいか」
『………』









「オフだものね」






第9章 了




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