scene 1






「もしもし? ああ、オーギュスト。やあ、元気かい。ああ、俺は元気だよ。
 そう、稽古中だ。本番は四月…。 え? そうか、うん。話は聞いたよ。なかなかだったって。
 いや、そんなことはないだろう。評論家は好きなことをいうものじゃないか。気にするなよ…。
 ああ。そうか。そうだな、そういうところはどうしても不自由になるだろうな…。
 ジャン・バチスト? 元気だよ。ああ、ミラもがんばってる。なんか演出のジダン・レスコーも含めて、不愉快なことが多い仕事なんだが、二人ともよくやってる…。本当にそう思うよ。
 ミラもうまくなったんだぜ。マジで。お前らにも見せてやりたいよ…」






「…いや、怒っていないよ。当たり前じゃないか。
全然気にしてない…。
 大丈夫だよ。そんな謝るなよ…。気にしていないって言ってるだろ。
 え…? そうなのか? 本当か?!
いや、それは、嬉しいさ。やろう! 是非また一緒にやろう!!
 え? だって嬉しいからさ。実のところ、お前からの電話をずっと待ってた。俺は皆のことを、変わらず仲間だと思ってるんだ。心からそう思ってる。
 だから、いいんだ。全然気にしない。
やろう。またやろう! おれがんばるからさ。
 昔みたいな、楽しくて仕方がないような、稽古場から帰りたくなくなるような、そういう芝居しようぜ!!」







「え? 何だって、オーギュスト? …よく聞こえないんだが」







「よく聞こえない。もう一度言ってくれ」







「オーギュスト、もしもし。もしも…」











<< 戻る fsoj 進む >>