41.返信







 返信遅れて申し訳ない。春眠暁を、というやつだ。
どうしてE.P.の人事データが発見されないのか、という件について。
 今回の事故ではデータの消失率が極めて高い為、断定は危険であるが、私見では、あなたの「天使」は普通の住民のように生体登録されなかったのではないかと考える。
 5470が統治代表を務める場合、そのようなことが起る可能性は簡単に言うと「有り得ない」ほど全く僅かであるが、零ではない。
 ご存知のように5470は1〜4ヶ月単位でTTMによるメンテナンスを受け、厚生局は彼らが蓄積する特定地域情報を四半期ごとにチェックする体制になっている。もしE.P.の存在が通常のように登録されていれば、殊にその知能レベルの低さは発見されているはずである。
 5470は勿論、規則違反を行えないような出来になっているが、ある状況においては規則無視行動も可能である。
 つまり、広く人類に関わること、人間の生命、運命に関わることが起きたと彼らが認識するような状況になった場合、彼らは規則を無視して行動する事も有り得るのである。
(例えば大地震が起きて被災した人々を助ける為に、自己判断で通常では許可されていないエリアを解放する、壊れた一般商店から物品を搬出し配布する、などがその例にあたる。
 すでに私がTTMを離れて20年が経過しているが、「子供たち」の基本構成に変更はないはずだ。)
 私は予想するのであるが、あの気の毒な「竜の騎士」は「天使」を見て、深く人類の神髄に関わりのある、深い使命を感じたのではないか。その為に規則を逸脱し、E.P.を自らの注意の下で大事に大事に育てていたのかもしれない。


 或いはもっと感傷的な予想を立てることも出来る。
もしE.P.の存在を厚生局が知ったら、調査のために母星に連れて行かれることは明白である。もしかするとゲオルギウスはそれを阻止したいと思ったのかもしれない。
 勿論これはプログラム異常である。
しかし背中に羽根のある人間を「天使」と判断すること自体が既に有効な反応ではない。まるで人間が恋をして頭をヘンにするみたいに、ゲオルギウスの意識もその一点を境に乱れたのかもしれない。


用のない私の予想は以上である。




寝たきりの友人より











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